日本で初めてガムが販売されたとき、広告文にはガムの食べ方が書いてあった。
少し長いけれど、明治43年7月の広告を引用してみると、
「甘美、芳香、清爽、噛んで尽きざるが特徴なり。
欧米流行の嗜好品。
運動家、事務家、紳士貴婦人老若男女諸賢は、すべからく試みられよ。
本品は一種のゴム質に数種の栄養物を加味して成れる衛生上無比の嗜好品にして、常に用い玉わば咀嚼不良の悪習を矯正し、又よく歯牙を掃除し、ことに喫煙の際に用ゆればその味をよくするのみならず、正にその代用として最も妙なり。
電車、劇場、汽車、汽船、野外、遠足、登山、又は競技の際に口中に含まば清爽いうべからず。
咽下(えんか)せず口中に永く鬼灯(ほおずき)のごとく咀嚼するを良しとす」
とある。
玉わば(たまはば)がいいですね。
「喫煙の際に用ゆればその味をよくする」も時代がかっていていいと思う。
しかし、この広告には批判文が寄せられた。
明治43年7月、業界紙『菓子新報』の「読書倶楽部」によると、
「チューイングガムと称する新菓は評判ほどの価値は無き様なり。この菓子を口に含めば唾液を生ずるゆえ、学生等の運動用に良しと広告せるは誇大の言にして信ずるに足らず、それには梅干にてたくさんなり」
というもので、ガムを食べるくらいなら梅干しでも食べてろ、というものだった。