ムンクの『叫び』の中に出てくる人物は叫んでいない。
あの人物は、耳をふさいでいるだけである。
この絵が誕生するきっかけとなった出来事が、ムンクの日記に記されている(1892年・30歳)。
ある日の夕刻、友人と歩いていると、日が沈み、空が突然、血のように赤く染まったと感じた。
恐怖におののいて立ちつくしていると、ムンクは「果てしなく大きな叫びが自然を貫いていくのを聞いた」という。
『叫び』は、その時の経験が描かれているとされているため、絵の中にいる人物は、果てしなく大きな叫びが自然を貫いていくのを聞いて、耳をふさいでいる。