18世紀頃まで、ロンドンの人々は、相手の体に手を触れながら話をしていた。
昔のヨーロッパの諸民族は、体の触れ合う雰囲気を好んでいた。
そのため、一つのベッドに数人で眠ることも珍しくなかった(フランス南部の山村の記録)。
垢(あか)は、体を保護するものだと考えられており、体を洗うことはほとんどなかった。
シラミがわくことも多く、お互いにそれを取り合うのが親愛を確かめる行為となっていた。
シラミに血を吸わせることは瀉血(しゃけつ)となり、悪い血を浄化すると考えられていた。
しかし、シラミはペスト菌を媒介するため、17世紀ロンドンではペスト(黒死病)が大流行した。
18世紀以前のヨーロッパでは、様々な伝染病が流行した。
6世紀に大流行したペストでは、ローマ帝国の市民の半分が死亡した。
14世紀中期に全ヨーロッパを襲ったペストは、ヨーロッパの人口の4分の1から3分の1が死亡した。
またその時の流行により、ベニス(ヴェネチア)では、人口の4分の3を失った。
17世紀の大流行では、ロンドン市民の18%が死亡した。
そのとき、60%の市民が疎開した。
ペスト(ペスト菌)は、ノミやシラミを介して伝染するため、人々のシラミに対する考え方や、密接を好む生活様式が変化する要因となった。
人口密度がある程度以上に高くなると衛生状態が悪化し、健康を損ねて死亡する人の率が高くなる。
この現象は、動物の世界では広く見られるもので、集団崩壊と呼ばれている。